「石けんの香り」って、そもそも何の香り?
人気の「石けんの香り」。その背景には、歴史があるのです。
消臭芳香剤で人気の「石けんの香り」。
エステー株式会社の調べでは、部屋用の消臭芳香剤で「石けんの香り」の売り上げは14.1%(2007年見込)。
ラベンダーや柑橘系を抑え、香りがついたものでは一番人気になっている。以前はラベンダーの香りが圧倒的なシェアを持っていたというから、この人気はすさまじい。

そんな、もはや誰もが知ってる「石けんの香り」だけど、「石けんの香りって、そもそも何の香り?」って聞かれたら、答えられない人は多いかもしれない。匂いは想像できるし、「あの石けんの匂い」でも確かに伝わるんだけど、それじゃ説明になってるようでなってない。
石けんの香りって、具体的には何の香りって言えるんだろう?
エステー株式会社に話を伺った。

「弊社の消臭芳香剤は、固形石けんが最もイメージの近い香りで、フローラル系をベースに、いくつかのアクセントを出す香りを合わせて構成しています」
どうやら、甘い花の香りを含めたいくつかの香りから、石けんの香りはできているらしい。
つまり、石けんの香りとは基本的に「花の香り」のようだ。

さらに調べを進めていくと、社名などは出せないものの、石けん関係の仕事に携わる方が、詳しい話を教えてくれた。
「各社で基準は違うかと思いますが、フローラルブーケの香りの“花王ホワイト”が、石けんの香りの基準になっているらしいと言われています。この商品は、ローズの香りや、シャネルNO.5にも使われている合成香料のアルデハイド(アルデヒド)などで作られているんですね」
1970年に発売された花王ホワイト。どうやらこれが、昨今の石けんの香りの“張本人”らしいのだ。つまり「石けんの香り」とは「ローズなどの花に、アルデハイドなど合成香料を混ぜた香り」。
ちょっと長い説明だけど、詳しく言えばそういうこと。もちろん各社、各製品で違う匂いではあるけど、ひとつの答えとして考えて良さそうだ。あ〜、スッキリした。

日本での石けんと香りの歴史は、明治時代までさかのぼる。苛性ソーダ製の粗悪な石けんが多かったという明治初期、そんな状況を憂いて作られたのが、1890(明治23)年に発売された「花王石鹸」。国産初の高級化粧石けんとして、外国の上質で香りのいい石けんを参考にして作られた。


「石けんというのは、汚れの落ち具合も大切ですが、それ以上に香りが大切なんですよ」(石けん関係の方の話)

香りの研究が行われ、試行錯誤が繰り返される中で、今の「ローズやアルデハイドなどの香り」へと改良されてきた石けんの香り。
石けんの香りは、石けんそのものの歴史に裏打ちされた、消臭芳香剤の最高傑作かもしれない。
(イチカワ)